鉄道事業における次世代の予防保全 CBM (Condition Based Maintenance)
鉄道事業における次世代の予防保全 CBM (Condition Based Maintenance)
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【鉄道事業における保全活動の動向】
電子機器や設備は経年劣化や部品の消耗等があり、永遠に問題なく稼働するという事はないはずです。何の保全もしなければ、いつかは故障が発生してしまい、最悪の場合事故につながってしまう可能性もあります。
保全活動は鉄道の安全運行に欠かすことのできない重要な業務です。車両、線路はもちろん、高架橋、トンネルといった設備等、保全の対象は非常に多岐にわたります。そしてこれらの保全活動は基本的に手作業により実施されています。
2020年にJR東日本が発行した、JR東日本ニュース『地上設備メンテナンスにおける安全・安定輸送に向けた取り組み』によると、鉄道における地上設備メンテナンスは、生産年齢人口が減少する中、通常のメンテナンスに加え、設備の老朽化や新規設備の増加による工事が、今後も続く見込みとされています。
深刻な人手不足の中、多くの地上設備を保守・管理し安全な運行を維持するためには、今後の保全活動の在り方について考えてみる必要があると感じています。
【保全の種類】
保全にはいくつかの種類があります。先ず、事故や故障が発生してから対応する事を『事後保全』 (RM:Reactive Maintenance)といいます。何かトラブルが起きてから対応するため生産性の低下や、トラブル対応の為の人件費、原因解明のための調査費などコスト増加につながります。またトラブルによる企業イメージの低下等、事後保全のみの対応では課題点が多くなってしまいます。
そのため多くの企業では、故障や事故を未然に防ぐため予防保全と組み合わせて運用するケースが多いのかと思います。予防保全とは、故障や事故を未然に防ぐため、トラブルが発生する前に検査や部品交換を実施する事をいいます。
現在主流の予防保全は『時間基準保全』(TBM:Time Based Maintenance)であると言えると思います。機器や設備の故障有無に関係なく、一定期間ごとにメンテナンスを実施し、機器や設備を正常な状態に保つ事を目的としています。時間基準保全(TBM)は事後保全(RM)に比べ故障を未然に防ぐとこができるため、故障による設備稼働率や企業イメージの低下を回避し、設備の耐用年数延長に貢献します。私たちが毎日安全に鉄道を利用できるのもこの保全活動のおかげと言えるでしょう。
一方で、”特にメンテナンスが必要ない状態”でも一定期間ごとに実施するのでコスト増につながったり、点検の為、定期的に設備などを停止しなくてはならないといった課題もあるようです。人手不足という背景もあり、こうした課題に対応する為、近年では『状態基準保全』(CBM:Condition Based Maintenance)が注目されるようになっています。
『状態基準保全』(CBM:Condition Based Maintenance)とは、機器や設備の状態により、必要と判断された時にのみメンテナンス実施する事を言います。老朽化や異常検知といった機器や設備の状態を予知し、メンテナンスを行うため非常に効率的で、保全コストを大幅に削減できる「次世代メンテナンス」といわれています。
この『状態基準保全』(CBM:Condition Based Maintenance)という考え方は以前から存在していましたが、導入コストが高く実用化が困難とされてきました。しかし、昨今のIoT・AI技術の進歩、普及を受けて、実用化のハードルが下がり注目されるようになっています。
(保全の体系図)
(各保全の特長)
【「リアルタイム寿命予測機能」がメンテナンスを変える?】
こうした背景を受けて、鉄道用電源における豊富な実績を有する株式会社トアックが、「リアルタイム寿命予測機能」(特許出願中)を搭載した電源製品”Sfida”を開発しました。MINMAX社(台湾)と共同開発したDC/DCモジュールを搭載した”Sfida”は、リアルタイムで電源の残存寿命を予測をし、その結果をLED点灯パターンで表示する画期的な電源です。
電源の寿命を決める大きな要素としては、主に「はんだの熱疲労破壊」と「電解コンデンサの電解液揮発」がありますが、”Sfida”はこれらの要素対応に加え、使用環境変化に適応できる独自の寿命予測アルゴリズムを搭載し、リアルタイムで電源の残存寿命を予測します。残存寿命がLED点灯パターンで可視化されるので、電源のオーバーホール/交換時期が予想しやすくなり、省メンテナンス化に貢献できます。
(Sfida写真)
【製品特長】
- リアルタイム寿命予測機能搭載(特許出願中)
- LED 点灯パターンで残存寿命を表示
- 小型、効率、高信頼を実現
- 鉄道関連安全規格 EN50155 準拠
- EMI 特性 EN55022-A 準拠
- 標準で基板両面コーティング処理
- 出力保護機能:過電圧、過電流、過熱
【想定用途例】
- 鉄道関連機器
- 発変電設備機器
- FA 機器
- 通信設備機器
- 防犯防災セキュリティ機器
SfidaのリーフレットDLはコチラ
いかがでしたでしょうか。鉄道事業における保守人員の深刻な人手不足の中、多くの地上設備を保守・管理し安全な運行を維持するためには、保守の総量を減らす=省メンテナス化を進めるのは一つの解決策だと考えます。今後も鉄道が安全で安定した運行を維持できるよう、電源製品を通じてどのようにお手伝いができるのか、今後も長期的な視点で思索を続けたいと考えています。
この記事を書いた人
- 高田 悠以(たかだ ひろい)
- 株式会社エスエムアイ 代表取締役
愛知県生まれ。名古屋外国語大学卒業後、シアトル留学を経て株式会社エスエムアイに入社。
医療用絶縁トランス、スイッチング電源、ACアダプター、DC-DCコンバーター等 電源製品の開発営業として勤務。日本のモノづくりを愛し、「お客様のお客様を満足させる事が真の顧客満足」をモットーに営業活動に従事。2018年に株式会社エスエムアイの代表取締役に就任。