カスタム電源の制作事例紹介 (生体化学分析装置向け)
カスタム電源の制作事例紹介 (生体化学分析装置向け)
このコラムでわかること
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生体化学分析装置とは
生化学分析装置は、採取した血液を遠心分離器にかけて成分を分離し、血清中の物質を化学的に分析する装置です。病気の診断や治療、病状の経過観察に不可欠であり、また、薬物治療の効果を評価するのにも用いられます。
お客様の課題
生化学分析装置には高い精度と信頼性が求められます。そのため、電源側には安定した電力供給と保護機能が必要不可欠となります。一般的には、液体や試料の移動や位置決めにサーボモータードライブが使用されますが、その制御で逆起電力が問題となります。
サーボモータードライブは、モーターに正確な指示を送り、特定の速度や位置に動かすために外部から電源を接続します。電源は、電流を流す力、すなわち起電力をもっています。その起電力によってモーターに電流を流します。ところがモーターが回転すると、モーターの内部で起電力が生じてしまいます、このモーター内部の起電力は、電源の起電力とは逆方向に生じてしまいます。この逆方向のエネルギーを逆起電力といい、回路に不安定性を引き起こす原因となります。 今回のカスタム電源事例では、この課題に対処するために「リジェネレーションクランプ回路」を採用しました。
リジェネレーションクランプ回路は、発生した逆起電力の値が一定の範囲を超えて上昇し、コイルからの電流がトランジスタのコレクタ-エミッタ間に流れ、トランジスタが破壊されることがないようにその電圧を安定化させ、逆起電力が回路内の他の部品や電源に損傷を与えないようにします。この回路の搭載により、逆起電力を管理し、回路内の電子デバイスの誤動作や破壊の原因を最小限にしています。また、過電圧保護(OVP)、過電流遮断(OCP)、過温保護(OTP)、過電力保護(OPP)、短絡保護(SCP)などの保護機能も搭載し、安全性を向上させました。
EMC特性の追求
生化学分析装置は、医療や研究などの分野で使用されるため、周囲の電子機器への影響を最小限に抑えるために、EMC(電磁適合性)規格への適合が不可欠です。特に、サーボモータードライブを搭載する場合、その制御中に高周波のスイッチング動作を行うことがあります。このスイッチングにより、周囲に高周波ノイズが放射され、他の電子機器に干渉を引き起こす可能性があります。
また、サーボモータードライブは電源からの電力を制御するため、電源ラインにノイズを導入することがあります。これにより、他の部品や装置に安定した電力が供給されず、動作の不安定性や誤作動が発生する可能性があります。
上記の問題を踏まえ、今回のカスタム電源の設計段階では、EMC対策に特に注意が払われました。適切なフィルタリングや回路設計により、高周波ノイズを低減し、装置からの電磁放射を抑制しました。また、回路設計においては、EMCに関連する規格やガイドラインに従い、電気的な絶縁やシールド化を実施しました。これらの対策により、生化学分析装置のEMC特性が向上し、周囲の電子機器との相互干渉を最小限に抑えることが可能となりました。
このように弊社では、お客様のさまざまな技術的課題に寄り添い、最適なソリューションをご提案することをお約束します。ご質問やご要望がありましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。御社の「モノづくり」に貢献できることを楽しみにしています。
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この記事を書いた人
- 高田 悠以(たかだ ひろい)
- 株式会社エスエムアイ 代表取締役
愛知県生まれ。名古屋外国語大学卒業後、シアトル留学を経て株式会社エスエムアイに入社。
医療用絶縁トランス、スイッチング電源、ACアダプター、DC-DCコンバーター等 電源製品の開発営業として勤務。日本のモノづくりを愛し、「お客様のお客様を満足させる事が真の顧客満足」をモットーに営業活動に従事。2018年に株式会社エスエムアイの代表取締役に就任。