【安全規格】IEC62368-1の基本解説
【安全規格】IEC62368-1の基本解説
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■IEC62368-1 とは?
2010年に情報処理機器、オーディオ・ビデオ機器に対する安全性の国際規格であるIEC62368-1 の第1版が発行されました。この規格は、情報処理機器等を対象とした安全規格『IEC60950-1』 とオーディオ・ビデオ機器等を対象とした安全規格『IEC60065』に置き換えられる規格です。
しかしながら、『IEC62368-1』は2つの先行規格(IEC60950-1,及びIEC60065)を単純に統合した規格ではありません。安全に対する基本概念に、Hazard Based Safety Engineering(HBSE:ハザードベースの安全工学) のコンセプトを取り入れている点が、先行規格との大きな違いと言えます。
この記事では 、IEC62368-1が基本概念としているHazard Based Safety Engineering(HBSE:ハザードベースの安全工学) の基本的な考え方等を説明するとともに、お客様の製品がIEC62368-1の要求を満たすうえで、押さえておきたいポイントと、IEC62368-1を取得したACアダプターやDC/DCコンバーター等の電源製品についてもご紹介します。
■Hazard Based Safety Engineering(HBSE:ハザードベースの安全工学)とは?
HBSEとは、”危険源を明確にし、その危険源に対して適切な対策を施す事で、人体への危害及び物的損害の可能性を軽減させる” という考え方やその技術的プロセスを指します。
元々、HBSEはヒューレット・パッカード(HP)社にて、「研究開発スタッフも製品安全の知識をもつべきだ」という発想から、トレーニングプログラムとして開発されたものらしいのですが、それが 現在、IEC62368-1という国際安全規格の基本概念として取り込まれるようになりました。
製品設計の段階から、危険源を明確にし対策を施す事で、開発初期の段階から安全コンセプトを製品に取り込むことができます。これにより、従来の事後対応型の”インシデントベース”な考え方よりも、アクティブに製品安全を達成し、安全基準をより高めることが可能となります。
■HBSEに基づく製品安全
情報処理機器、オーディオ・ビデオ機器といった製品は技術革新と製品の多様化が著しく、プロダクト・サイクルの周期は短くなっています。製品開発にかけられる時間に制約がある中でも、市場での競争力と製品安全を高いレベルで両立した製品の開発を続けるには、製品開発の初期段階から、HBSEの基本コンセプトを製品に取り込むことが重要になると考えます。 製品設計の初期段階から安全性について十分に検証しリスクを明確にすることで以下のメリットが期待できます。
【製品安全面のメリット】
【経営面のメリット】
■HBSEの基本的な考え方
HBSEでは、「傷害は、ある人体に、十分な大きさのエネルギが十分な時間、加えられた時のみ発生する」とされており、この基本的な考え方は、HBSEの象徴的なツールである「スリーブロックモデル」により説明されます。
【押さえたいポイント】
このスリーブロックモデルをベースとした考え方により、下図の2つの「傷害に至らない」モデルが導き出されます。
【押さえたいポイント】
上記の「傷害に至らない」モデルをベースに、人体許容度を超えない設計にできれば、製品安全は確保できます。HBSEは技術に依存しない安全工学であるため、最新の技術であっても、エネルギー源の危険度を定量化し判断できます。これにより、安全規格の改訂が最小限となり、技術の進化や技術革新を促進する事ができるので、技術革新と製品の多様化が著しい情報処理機器やオーディオ・ビデオ機器にとって有効的な考え方だと言えます。
■HBSEの対応プロセス
IEC62368-1 では HBSEのコンセプトを基本にしたプロセスを重視しています。
具体的な対応プロセスを示したフローチャートは下図の通りです。
(1)痛みや傷害を引き起こす可能性のある製品のエネルギー源を特定する。(電気的、機械的、または熱による、など)
(2)エネルギー源が身体に及ぼす影響を分類する。(痛み、傷害、発火の可能性など)
(3)上記に対して必要なセーフガードを特定する。
(4)特性または構造に基づいて、これらのセーフガードの有効性を検証する。
■電源製品の重要性
これまでHBSEについて大まかな内容を解説いたしましたが、前項の説明にもある通り、HBSEの実践で最も重要な最初のステップは「主要なエネルギー源の特定」です。つまり 主要エネルギー源である電源装置に、単体でIEC62368-1を取得しているACアダプターやDC/DCコンバーターを採用する事で、HBSEに基づいた製品安全の実現に大きく近づくといえるのではないでしょうか。
エスエムアイではIEC62368-1を取得したAC電源、及びDC/DCコンバーターを幅広くラインナップしております。お客様の様々な要求仕様に基づき、最適な電源選択のお手伝いをさせて頂く事も可能です。ぜひ一度お問合せください。
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この記事を書いた人
- 高田 悠以(たかだ ひろい)
- 株式会社エスエムアイ 代表取締役
愛知県生まれ。名古屋外国語大学卒業後、シアトル留学を経て株式会社エスエムアイに入社。
医療用絶縁トランス、スイッチング電源、ACアダプター、DC-DCコンバーター等 電源製品の開発営業として勤務。日本のモノづくりを愛し、「お客様のお客様を満足させる事が真の顧客満足」をモットーに営業活動に従事。2018年に株式会社エスエムアイの代表取締役に就任。