【スイッチング電源・アダプター】医療用電源とは
【スイッチング電源・アダプター】医療用電源とは
電気製品に関する事故で気を付けなくてはならないことの一つが感電です。電気製品からの感電によって状況によっては火傷、ひどい場合には死亡事故も起こり得ます。医療用電源が一般用電源と最も大きく異なる点は求められる安全レベルです。
医用電気機器に繋がれている患者は体調がすぐれなかったり麻酔がきいていたりなど、体をうまく動かすことができない場合があります。そのため、感電してもすぐに逃げることができないこともあります。そのような危険な状態を避けるために、医用電気機器は一般家電製品よりも強い安全性・安定性が求められています。
安全規格
電気機器には種類によって適用される安全規格に違いがありますが、医用電気機器に使用される電源は厳しい要求基準をクリアする必要があります。医用電気機器やヘルスケア機器に関する安全規格として「IEC60601」というものがあり、欧州やアメリカ、カナダなどほとんどの主要国が国家規格として採用しています。
IEC60601の構成要素
- 基本規格(60601-1)
- 副通則(60601-1-x)
- 個別規格(60601-2-x)
- 性能規格(60601-3-x)
特徴①絶縁耐圧・安全距離
先程紹介した基本規格(IEC60601-1)では医用電気機器をさまざまな電気リスクから確実に保護するために以下の二点を規定しています。
- 「沿面距離(二つの導電性部分間の空間での最短距離)」と 「空間距離(二つの導電性部分間の絶縁物の表面に沿った最短距離)」の最小安全距離
- 「絶縁電圧測定値」
これらの規定値は、2点間の距離、絶縁構造、絶縁耐力に基づき以下の通り区別されています。
保護手段は、操作者を保護する「操作者保護手段(MOOP)」と 患者を保護する「患者保護手段(MOPP)」に分けられています。
医療用電気機器の絶縁システム構造
特徴②ダブルヒューズ
医療用電源の特徴の一つにL、Nにヒューズを搭載している点です。雷害や低圧線の瞬時接触、ヒューズ切れなどが原因で停電した場合、 ダブルヒューズはこのような停電の発生を半減します。
特徴③低漏れ電流
漏れ電流とは絶縁材料の表面や内部を通って流れる機器の機能には関係がない電流です。医用電気機器は正常な状態、または単一故障状態で患者や操作者を保護するため、漏れ電流の測定値が許容範囲内になるように設計する必要があります。
IEC60601-1では、医用電気機器やヘルスケア機器が患者から1.83m以内にあるとき、ガイドラインの適用を義務付けています。1.83m以内にある医用電気機器の例として、プローブ、心電計、手術台などが挙げられます。患者との物理的な接触のレベルによって、以下の三段階に分けられています。
Type”B”ボディ:患者と電気的接触はない機器
Type”BF”ボディフローティング:患者と電気的接触がある機器
Type”CF”カーディアックフローティング:患者の心臓と電気的接触がある機器
特徴④EMC規格
IECは医用電気機器の電磁両立性(EMC)の最新版を2014年に発行し、電磁妨害に関する要求はさらに厳しくなりました。EMCのレベルのパフォーマンスの高さは、製品の不良や重大な機器による事故の要因や可能性を減らすため、非常に重要だとされています。
特徴⑤リスクマネジメント
IEC60601-1 第3.1版及びIEC60601-1-2第4版では医用電気機器のリスクマネジメントの役割が重要視されています。製造業者は医用電気機器に関連するハザードを特定し、それらのリスクを推定・評価するだけでなく、コントロール・監視する一連のサイクルを確立し維持することが求められています。
例えば、リスクを分析する段階では、意図する使用/特性の特定 やハザードの特定、リスクの推定を行い、リスクコントロールの段階では、リスク管理を実行し、残留リスクの評価・全体的なリスクの管理を行っています。
最後に
医用電気機器を使用する患者や操作者は危険を察知する事ができない可能性や、危機に対して正常に反応できない可能性があります。そのため、安全性を重視しより厳しい基準に応える必要があります。
参考
ASIAN POWER DEVICES【医療機器用スイッチング電源】医療用電源の漏れ電流について